空港ビジネスの「人・組織」価値増大コンサルタントの秋葉です。
空港で働いていた頃、私は常に “安全” と向き合っていました。
深夜の電話、突発的な障害連絡、設備トラブル、工事に伴う緊急対応。
空港という巨大インフラを支える仕事は、緊張と責任の連続です。
中でも忘れられないのは、通信線を誤って切断してしまったときのこと。
システムが動かず、通信も回復しない。
頭の中は真っ白で、心の底から「まじか…」という衝撃が走りました。
でも次の瞬間には、
「どうにかしなくちゃ」
という焦りと責任が押し寄せてくる。
夜通し関係先と連携しながら復旧に向けて必死に対応したことをよく覚えています。
当時は若手で、空港全体がどう動いているのかも十分に理解できていなかった。
しかし今振り返ると、
1つのミスがどれだけ多くの人に影響を与えるか
その現実が、私の仕事観を根底から変えました。
【1】過度な「安全第一」は、挑戦を止めてしまう
もちろん、空港で安全より大切なものはありません。
でも、私は現場で何度もこう感じてきました。
・安全の名のもとに、挑戦が止まる
・新しい工夫が「リスクがあるから」と潰される
・変化しないことが最も「安全」だと考えられてしまう
結果として、一部の現場は無気力になっていく。
誰も怒られたくないから、若手は委縮し、改善提案も出なくなる。
空港という特殊な環境だからこそ起こりやすい構造ですが、
これは安全文化を弱くする大きな要因になります。
【2】愉しさとは、「信頼と感謝が生まれ、またやりたいと思える」状態
私は仕事における“愉しさ”をこう定義しています。
愉しさとは、信頼と感謝が生まれ、またやりたいと思える状態。
・仲間と一緒に困難を乗り越えた
・任せてもらい、認めてもらった
・ありがとうと言われた
・自分の成長を感じられた
こうした瞬間に、人は自然と「また頑張ろう」と思える。
愉しさは、単なる気分の高揚でも娯楽でもなく、
人が仕事に誇りを持つための心の状態 です。
【3】若手としてサポートに入っていた第3ターミナル工事
たしかに私が主担当ではありませんでした。
異動したばかりの若手で、行っていたのはサポート的な業務が中心でした。
それでも、別案件で夜通しオープン対応に関わった日のことは忘れられません。
深夜の最終チェック、調整が続く現場、関係者の緊張感。
空港が静まり返る時間帯に、ひたすら工事区画を駆け回り、
朝になって旅客が流れ込んでいく光景を見たとき、胸が高鳴りました。
「空港はこうして命を宿すんだ」と。
ニュースで新ターミナルが大々的に報じられ、
自分がほんの少しでも携わった現場が動き出しているのを見ると、
言葉にならない誇りが湧きました。
あの高揚感は、愉しさそのものでした。
【4】給油事業部でも同じことを感じていた
給油事業部にいた時も、愉しさは随所にありました。
グループ会社と一緒に新しい設備をつくりあげる過程、
トラブルが起きても笑い合いながら乗り越えた日々、
そして工事が無事終わった瞬間。
毎回、
「このチームで良かったな」と思える場面がありました。
そこにあったのは、
・安心できる人間関係
・信頼できる仲間
・感謝の言葉
・成長の実感
愉しさは、こうした“循環”から生まれるものです。
【5】安全と愉しさは対立しない──むしろ補完し合う
「楽しさを追求すると、安全が守れなくなるのでは?」
そう思う方も多いかもしれません。
でも、私ははっきりと断言できます。
安全と愉しさは補完関係にある。両立する。むしろ両方が必要です。
なぜなら、
愉しさのある現場ほど、
・安全の意味が腹落ちする
・手を抜かない
・トラブル対応が速い
・共有がスムーズ
・若手の成長が早い
つまり、安全が“当たり前に強化される”のです。
反対に、
愉しさのない現場は、
・改善が止まる
・新しい取り組みが潰れる
・若手が萎縮する
・責任が押し付けあいになる
・安全文化が弱くなる
これは多くの空港・公共インフラに共通する課題です。
【6】空港がディズニーランドになる未来
安全のルールは絶対です。
最低限のラインは必ず守らなくてはいけません。
しかし、その上にワクワク(愉しさ)をつくる余白は確実に存在する。
ディズニーランドのキャストは、
・安全ラインを厳守しながら
・お客様に笑顔で接し
・裁量を持って“魔法の瞬間”をつくっています。
私は空港も同じように、
人がいきいきと働き、旅客に素晴らしい体験を届ける場所になれる
と本気で信じています。
【7】愉しさのある現場は、強い
最後に、私が経験を通して確信していることがあります。
愉しさのある現場は、トラブルに強い。
ネットワークの現場でも、給油事業部でも、
雰囲気の良いチームのトラブル対応は信じられないほど速かった。
「誰かが困っていたら自然と声をかける」
「頼られたら気持ちよく動く」
「任せてもらえたら頑張れる」
そんな空気が安全と品質を支えていました。
愉しさの源泉は
安心・信頼・感謝・誇り
です。
安全だけでは生まれません。
愉しさだけでも生まれません。
両方が循環する現場だけが、
本当に強く、しなやかで、あたたかい組織になるのです。
