デジタルは魔法じゃない。アナログに寄り添うDXの話。
エアポート人財育成の専門家、秋葉慎太朗です。
DXが進む中で、「自分たちの経験はもう古いのでは」と感じている40代・50代の方が増えています。
けれど、私が現場で見てきたのはその逆でした。
人の勘と経験こそ、デジタルを本当に活かす力です。
DXは“魔法”ではない
DXという言葉を聞くと、何か特別な仕組みを導入すれば、
業務が一気に効率化されるようなイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、実際の現場はそんなに単純ではありません。
どんなに便利なツールを導入しても、使う人が納得して理解していなければ動かないのです。
私が成田空港で働いていたときも同じでした。
最新の機器や設備を整えても、現場の人が「使いづらい」と感じれば意味がない。
たしかに使ってくれはしますが、納得感が低いままで本当の活用というのは実現しづらかったです。
本当に大切なのは、人の知恵と仕組みの調和でした。
現場の「勘」は、DXでは代替できない
特にトラブルや緊急時。
私は何度も、現場リーダーの判断力と経験に救われました。
空港の裏側では毎日のようにトラブルが起こるんですよね。
どしゃぶりの雨の中、革靴で貨物エリアを駆けまわった思い出も今では懐かしいです。
トラブル時は限られた情報の中で、一瞬の判断が求められる場面です。
焦って動けなくなる若手を落ち着かせ、自ら先頭に立って対応する姿。
そこには、経験を重ねた人だけが持つ“勘”がありました。
その感覚は、デジタルでは再現できません。
AIがどれほど進化しても、最後に人を守るのは人の判断力です。
私は、現場でその現実を何度も目の当たりにしてきました。
継承してこそ、勘は意味を持つ
ただし、その“勘”も継承されなければ意味がありません。
今の若手世代は、経験よりも効率を重視する傾向があります。
「背中を見て学べ」だけでは伝わりにくい時代です。
だからこそ、40代・50代の皆さんにお願いしたいのです。
これまで培ってきた経験を、言葉にして、形にして、残してほしい。
ノートでも、ドキュメントでも構いません。
あなたの「判断の基準」「気づき」「現場の癖」を残すことが、
次の世代にとって最大の財産になります。
それが、現場力を未来につなぐDXになります。
効率的な若手も、自分の時間で読める資料は喜んでくれますよ。
アナログとデジタルは“敵”ではない
DXはアナログを否定するためのものではありません。
アナログの良さを守りながら、人がより安全に、より快適に働けるようにするためのものです。
つまり、アナログとデジタルは共存する関係。
人の勘と経験に、テクノロジーの力を掛け合わせることで、
より強く、柔軟な組織が生まれていきます。
結びに
今日も、現場で働く皆さんのおかげで安全・安定運用が続いています。
その背景には、判断力・経験、そして仲間を想う気持ちがあります。
DXは「新しいものに置き換える」ことではありません。
人の想いと知恵を未来へ継承することこそが、DXの本質です。
40代・50代の皆さん。
どうかご自身の経験に誇りを持ってください。
あなたの勘と経験があるからこそ、デジタルは本当の力を発揮します。
