「前にも教えたんだけどな…」新人が仕事を覚えないとき、どうすればいい?

1. 「前にも教えたんだけどな…」と思うことはありませんか?
こんにちは。空港ビジネスの「人・組織」価値向上コンサルタント、あきばやコンサルティングの秋葉慎太朗です。
新人教育を担当している方から、こんな声をよく聞きます。
「一度教えたんですけど、また同じところで止まっていて」
「メモもちゃんと取ってたんですよ。それでも翌週には同じことを聞いてくるんです」
一度説明した。
実際にやって見せた。本人もメモを取っていた。
それでも数日後にまた同じ場所で止まっている。
そのとき指導する側がどう感じるか、想像に難くありません。
「前にも教えたんだけどな」という気持ちが出てくるのは、当然のことだと思います。
特に空港のような現場では、安全や保安、定時性や品質を守りながら人を育てなければならない。自分の仕事も抱えながら、新人の横に付いて教える時間をつくっている。その現実の中で「何度教えてもできない」という状況が続くと、指導する側が消耗していくのは無理のないことです。
この記事では、そんな状況にある方に向けて、少し違う視点をお伝えしたいと思います。指導者を責めるつもりも、新人を責めるつもりもありません。ただ、「もう一度説明する前に、試せることがあるかもしれない」という話をしたいと思っています。
2. 私は優秀な部下や後輩に恵まれていました
最初に正直に書いておかなければならないのですが、私自身は空港会社で働いていた頃、優秀な部下や後輩に恵まれていたほうだと思っています。
一を伝えると八か九まで理解してくれる人が多く、こちらが細かく指示を出し続けなくても、仕事の意図を汲んで、自分で考えながら動いてくれていた。ですから、「何度教えても全く覚えてくれない」という経験ばかりをしてきたわけではありません。
ただ、そんな中でも、私が意識していたことが一つありました。
それは仕事を頼むときに「この仕事は何のためにやるのか」を伝えるということです。
「これをやっておいて」だけでは終わらせない。
なぜこの仕事が必要なのか、誰の役に立つのか、これを経験することでその人に何が残るのか。
できるだけそこまで伝えるようにしていました。
これは私がグループ会社に出向した時に強烈に経験したことが大きく影響しています。
「〇〇の設備写真を撮ってきてほしい」とだけ言われて指示が伝わっていく。
これにとても違和感を覚えたのがキッカケです。
何のために?誰がどう使うのか?
そのコンテキストが抜け落ちた仕事をやるのは私にとって苦痛でしたし、意図が理解できなければ自分で考えたことが裏目に出ることも高くなる。
だからこそ、目的や対象者、そしてそこから起こるアウトカムをしっかりと伝えるようにしていました。
それが良い仕事に繋がると感じてます。
今振り返ると、丁寧に目的を説明していたのが部下や後輩の納得感にもつながっていたのだと思います。
もちろん断言はできませんが、少なくとも「目的が見えている仕事」と「目的が見えない仕事」では、取り組み方が変わるということです。
3. 手順を覚える前に、「何のための仕事か」が見えているか
新人が同じところで止まり続けるとき、指導する側は「説明が足りなかったのかもしれない」と考えがちです。より詳しいマニュアルを作る、手順書に図を加える、チェックリストを渡す。そうした対応が必要な場面も、確かにあります。
ただ、もう一つ考えてみてほしいことがあります。本人は「この仕事が何のためにあるのか」を、理解できているでしょうか。
手順だけを頭に入れている状態だと、状況が少し変わった途端に対応できなくなることがあります。前回と少し違うケース、想定外の出来事。そういった場面で止まってしまうのは、覚えていないというより、「前回教わった通りの状況」でないと動けない、ということかもしれません。
目的が見えていれば、状況が少し変わっても「この仕事は最終的にこれを守るためにある」という軸で考えられます。でも目的なく手順だけを覚えていると、その軸がない。だから少しずれると、止まってしまう。
新人教育の現場で「なぜやるのか」を最初に丁寧に伝えることは、手順を教えることと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なことかもしれないと、私は感じています。
4. 最初は、見せて教える。それは絶対に必要だと思う
ここで一度、立ち止まって書いておきたいことがあります。
「新人には自分で考えさせればよい」という考え方があります。自主性を大切にする、教えすぎない、という方向です。
その考え方自体を否定するつもりはありませんが、空港のような現場では、それをそのまま当てはめることはできません。
安全に関わる手順、保安上のルール、定時性を守るための確認動作。これらは、経験のない新人に「まずやってみて」と丸投げできるものではありません。知らないことで事故や問題が起きれば、本人にとっても周囲にとっても取り返しのつかないことになります。
だから最初は、経験者がやって見せる。必要な手順を伝える。危険なポイントを説明する。一緒にやってみる。この積み重ねは、OJTの基本として絶対に必要だと思っています。
その上で、一つだけ気をつけてほしいことがあります。
いつまでも「正解を教え続ける」状態が続くと、本人が自分で考える余地がなくなっていきます。新人が迷うたびにすぐ答えを出し、止まるたびにすぐ説明を加える。それを続けると、本人の中に「困ったら誰かが教えてくれる」という前提ができていきます。
自分の足で動けるようになるためには、どこかで「教えてもらう時間」から「自分で考える時間」へ移っていく必要があります。その切り替えをどうするか、というのがこの記事の核心です。
5. 教える量を増やす前に、本人のアウトプットを増やしてみる
新人が同じところで止まったとき、すぐにもう一度説明を始める前に、試してみてほしいことがあります。
本人に、話してもらうのです。
「この仕事、何のためにやっていると思う?」「今どこまでは分かってる?」「どこに不安や迷いがある?」「次に同じ場面になったら、自分ならどうする?」
こうした問いかけを、試験や確認のためではなく、「今、本人が何をどう理解しているのかを知るため」にしてみてください。
これをやってみると、指導する側も初めて見えてくることがあります。「手順の後半は分かっていたんだ」「そこの意味が違って伝わっていたのか」「目的ではなく、手順の暗記として受け取っていたのか」。そういったズレが、話してもらうことで初めて分かる。
自分の言葉で話そうとすることは、頭の中を整理することでもあります。曖昧に分かっていたことが、言葉にしようとする過程で「あ、自分はここが実はよく分かっていなかった」と気づく。その経験自体が、次につながっていきます。
大切なのはこれを問い詰める場にしないことです。これ、とっても大事です。
「前にも教えたよね?」という圧力を質問の形に変えるだけでは意味がない。
あくまで「一緒に整理しよう」というスタンスで聞くことが、この方法が機能するかどうかを左右します。
自分の言葉で話し、自分なりに考えを整理し、次の行動を自分で決めてみる。そうした小さなアウトプットを重ねることが、「教えてもらわないと動けない」状態から「自分で考えて動ける」状態への変化につながっていくのだと、私は思っています。
6. 明日、一つだけやるとしたら
新人が仕事を覚えないとき、原因は一つではありません。もう一度丁寧に教えることが必要な場合もある。本人が環境に慣れておらず、緊張で頭に入っていないこともある。教え方を変えることで改善する場合もある。
だから、「新人が悪い」「指導者が悪い」と早く決めつけないほうがいいと思っています。その前に、相手が今何を理解していて、何が見えていないのかを知ることから始めてみてほしいのです。
もし明日、新人が同じところで止まっていたら、すぐに説明を始めずに一度だけ聞いてみてください。
「今、どこまでわかってる?」
(もちろん、優しく丁寧に聞きましょう)
その答えを、途中で遮らずに聞いてみる。
そこから、次の一手が見えてくるはずです。
人は、正解を受け取り続けるだけでは、自分の足で前に進めるようにはなりません。
自分の言葉で話し、自分なりに考え、実際に動いてみる。その積み重ねが、いつか大きな変化につながっていきます。
新人育成も、最終的にはそこを目指しているのだと思います。










