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信頼される上司は、なぜ細かく口を出さないのか?部下が自分で動ける「任せ方」

信頼される上司が、部下に考える余地を残す理由

信頼される上司は、部下が自分で考えられるところまで、細かく口を出しません。ただ、それは何も言わず放置しているからではありません。仕事の目的やゴールを共有し、必要な時には支えながら、本人が判断できる余地を残しているのだと思います。

とはいえ、どこまで任せればよいのか。この加減は、なかなか難しいものです。口を出せば部下の主体性を奪いそうですし、任せれば任せたで、相手が困ってしまうこともあります。

こんにちは。あきばやコンサルティングの秋葉慎太朗です。私は成田国際空港株式会社に11年間勤務し、現在は中小企業診断士として、空港ビジネスを中心に人財育成や組織開発を支援しています。

私自身、細かく管理されて仕事の面白みを感じられなかった時期も、任せてもらって大きく成長できた時期もありました。そのため、自分がリーダーをするなら、人には大きく任せたいと考えていました。

ところが、それでうまくいかなかった経験もあります。自分がされて嬉しかったことを、そのまま相手にすればよい。どうやら、そう簡単な話でもなかったのです。

細かく管理されると、「自分で考える意味」がなくなっていく

ある時期、私は仕事の進め方まで、細かく管理されているように感じていました。自分はただの駒でしかないような感覚でした。

進め方一つ取っても、褒められることはほとんどありません。一方で、何かうまく進んでいなければ、なぜうまくいっていないのかを説明しなければならない。そうした環境の中で、仕事の面白みはほとんど感じられませんでした。

やる気なんて、出ようがないですよ。少なくとも、当時の私はそう感じていました。

仕事ですから、進捗の確認も、うまくいかない理由を整理することも必要です。ただ、それが仕事の進め方の隅々にまで及ぶと、自分で工夫できる場所が見えにくくなります。任されている仕事であっても、自分の仕事という感覚を持ちづらくなるのだと思います。

細かい管理が続けば、自分で考えることよりも、上司の正解を当てることに意識が向く可能性があります。どう進めればよいかを考えても、結局は上司のやり方に直される。それなら、最初から指示を待つ方が合理的だと学んでしまうかもしれません。

部下が自分で考えないように見える時、考えてもよい余地が残っているかは、振り返ってみたいところです。

もっとも、当時の上司の意図を、私がすべて理解していたわけではありません。上司の立場には、失敗させたくない、自分が責任を負う、品質を保ちたいといった事情があります。忙しければ、自分で決めた方が早いと考えることもあるでしょう。

いわゆるマイクロマネジメントは、悪意だけで起こるものではないと思います。丁寧に見ようとした結果、本人が判断する機会まで減らしてしまう。だから、確認の回数だけで良し悪しを決めることもできません。何を確認し、どこを本人に委ねているかが問われるのだと思います。

任せてもらった時、自分で考えて仕事を進めるようになった

一方で、給油事業部にいた頃は、自分でも大きく成長したと感じています。

直属の上司がIT関係にそこまで明るくなかったという事情もありましたが、私にはかなり大きな裁量を持たせてくれました。仕事の進め方について、細かく口を出されることもありませんでした。

当然、任されたからといって、すべてが順調に進むわけではありません。仕事なので、トラブルも起こります。

その上司は、起きてしまったことについて強く叱責するより、どうすれば解決できるのか、今後どうするのが良いのか、と考える上司でした。問題が起きた後も、自分で考えて解決へ向かう余地があったのです。

私はその中で、自分で考え、自分で判断し、問題を解決まで導く経験を多く積みました。指示された作業を終えるだけでは得られない経験だったと思います。何を選ぶか、その結果を受けてどう動くかまで、自分で考える必要がありました。

私の成長につながったのは、トラブルが一度も起きない環境ではなく、トラブルがあっても自分で考えて立て直せる環境でした。

同じ頃には、紙資料による承認から電子承認へ移行する、試験的なDXテーマなども任せてもらいました。以前の私であれば、余計な仕事が増えるなと感じて、あまり乗り気になれなかったかもしれません。しかし、その頃はチャレンジングな仕事も、自分からどんどんやってみようという感覚になっていました。

ただ、ここは綺麗な成功談にしすぎない方がよいですね。この頃には退職を心に決めていたので、できる限りいろいろな経験をしておこうと思っていました(笑)。ある意味、吹っ切れていた部分もあります。

ですから、任せてもらったことで会社への忠誠心が高まり、何もかも前向きになった、という話ではありません。自分自身の事情も重なっていました。それでも、裁量を与えてもらっていたからこそ、自分で考えて挑戦できたことは確かです。

この感覚を考える補助として、自己決定理論があります。仕事の動機づけを扱ったデシさんたちの論文では、本人の視点を理解することや、自発的な行動を促すことなど、自律性を支える上司の関わりが論じられています。(有名な理論ですから、聞いたことある人も多いと思います)

私の経験だけで効果を断定することはできませんが、自分の判断が仕事に反映される感覚は、私にとって大きな違いでした。

ところが、自分がリーダーになると「任せすぎた」

こうした経験があるので、私は人に細かく口を出す方ではありません。むしろ、自分の課題として思い当たるのは、任せすぎたことです。

中小企業診断士の養成・実習の過程で、チームを組んでコンサルティング実習を行った際、私は班長を担当しました。自分としては全体の方向性を示し、その先はメンバーそれぞれに任せているつもりでした。

ところが、メンバーからは、もっと具体的に考えてほしいという趣旨のフィードバックを受けました。

私にとっては、方向性が分かっていて、進め方を任せてもらえるのはありがたいことです。細かく口を出されるのが嫌だった経験もありますから、他の人もその方がやりやすいだろうと思い込んでいた部分がありました。

でも、私が示した方向性だけでは、相手が動くために十分ではなかったのです。リーダーとして任せたつもりでも、受け取る側には、もう少し一緒に具体化してほしいところがあった。この違いは、私の好みだけを基準にしていては分かりません。

大枠だけ示してもらった方が動きやすい人もいれば、途中で相談しながら進めたい人もいます。かなり具体的な指示があった方が、安心して取りかかれる人もいるでしょう。

自分がされて嬉しいマネジメントを、そのまま相手にもすることが、良いマネジメントとは限らない。この経験から、そう感じています。

自分が嫌だったことを避けるだけでは、相手に必要な支援まで届くとは限りません。私の場合、細かく指示しないようにすることには意識が向いていても、相手がどこまで具体性を求めているか、という見方が足りなかったのだと思います。

「任せる」と「放置」は、何が違うのか

私は、任せるとは、相手が判断するための情報と、必要な時に支援を受けられる状態を用意したうえで、仕事を委ねることだと考えています。放置は、その情報や支援が足りないまま、相手だけに進行や結果を引き受けさせてしまうことです。

上司が任せたつもりかどうかだけでは、違いは決まりません。本人が動ける状態になっているかを見なければ、診断士実習の時の私と同じことが起きます。

そこで、任せる時には、次の四つを考えたいと思っています。

  • 目的:誰のために、何を実現する仕事なのか
  • 目標:何を、どの状態まで仕上げればよいのか
  • 信頼:本人の判断を尊重し、必要な時には支えること
  • 本人の意向:どのような関わり方なら進めやすいのか

これは、私の経験を振り返って整理したものです。目的が分からず面白みを感じられなかった仕事もありましたし、裁量を持たせてもらい、解決に向けて考えられた仕事もありました。そして、自分なりに方向性を示しても、相手には足りなかったこともあります。

この四つは、一度説明すれば終わりというものでもありません。仕事が進む中で、目標の認識がずれていたと分かることも、当初より支援が必要になることもあるはずです。任せた後にも、確かめ直せる関係が必要なのだと思います。

①目的――「誰のための仕事か」が分かると、自分で考えられる

目的は、特に「誰のための仕事なのか」まで伝える。これは、私自身が目的をよく理解できないまま仕事をした経験から、大切にしたいと考えていることです。

グループ会社へ出向していた時代、依頼された仕事について、誰が使うのか、何のために使うのか、その仕事によって何を実現したいのかを、十分に理解できていないことがありました。

作業として何をするかが分かっていても、その先が見えていない。結果として、仕事そのものへの理解が浅くなり、面白みも感じづらかったのです。目的が分からない仕事は、どんな仕事でもつまらなくなりやすい。私はそう感じています。

これは、やる気だけの話でもありません。目的が分からなければ、迷った時に自分で判断するための手がかりが足りなくなります。

例えば資料を作る仕事でも、詳しい人が判断するために使うのか、初めて読む人が概要を理解するために使うのかで、必要な説明は変わります。これはあくまで例ですが、誰がどう使うかを知らずに、作り手だけで適切な内容を考えるのは難しいでしょう。

依頼する側は背景を知っているため、わざわざ言う必要はないと感じるかもしれません。しかし、受け取る側に同じ情報があるとは限りません。私もリーダーとして、自分には見えているものを相手も見ているつもりにならないよう、気をつけたいところです。

目的を共有することは、部下が迷った時に戻れる判断の基準を渡すことです。

細かい手順をその都度聞かなくても、誰のために何を実現する仕事なのかに戻って考えられる。自分で動いてもらいたいのであれば、そのための情報を最初に渡しておく必要があります。

②目標・③信頼・④本人の意向――ちょうどいい任せ方を一緒に考える

目的とあわせて、仕事のゴールである目標も共有したいところです。何をつくるのか、どの状態なら完成なのか、何が成果になるのか。必要に応じて、期限や守るべき条件も確認します。

目的だけ伝えて、あとは考えてもらうのでは、仕事の範囲が曖昧なままになることがあります。診断士実習での私も、方向性を示したことで、相手が動くための説明までできたつもりになっていたのかもしれません。

例えば、案をいくつか出すところまでなのか、一つに絞って提案できる状態までなのかでは、求められる仕事が違います。ここが曖昧だと、本人は仕上げたつもりでも、依頼する側には足りなく見えてしまいます。

目的と目標は具体的に共有し、そこへ至る方法には一定の裁量を残す。私が任せてもらって成長した経験を、リーダー側の行動に置き換えるなら、こうした形になると思います。

次に、信頼です。任せると言った後で、逐一チェックし、自分と違うやり方をすぐに直し、途中経過に毎回口を出していたら、相手には任されている感じがしないかもしれません。

もちろん、成果や品質に関わる確認は必要です。安全に関わる手順など、本人の好みだけでは変えられないものもあります。ただ、守る必要がある条件と、上司が慣れているやり方は、分けて考えたいところです。自分と違うという理由だけで直していないかは、確認する側が振り返る必要があります。

給油事業部時代の上司を思い返すと、進め方を任せてくれたことと、トラブルの時に解決へ目を向けていたことが、私の中ではつながっています。何かあれば自分だけでどうにかしなければならない、という任せ方とは違っていました。

必要な時には助ける。相談があれば一緒に考える。トラブルが起きれば、解決と今後の対応を考える。そうした関わりがあってこそ、本人も判断を引き受けやすくなるのだと思います。

そして、四つ目の本人の意向です。私自身の反省からすると、ここは特に外せません。

上司がその人の経験や力量を見て、任せる範囲を考えることは必要でしょう。ただ、見立てだけで決めず、本人にも、どのように関わってほしいかを聞きたいのです。

例えば、任せる前に、こんな聞き方ができます。

「ある程度任せた方がやりやすいですか。それとも、最初は具体的に示した方がよいですか」

「途中では、どのくらいの頻度で確認や相談ができると進めやすいですか」

相手が相談しながら進めたいのであれば、その機会をつくる。大枠が分かれば動けるのであれば、必要な確認のタイミングを合わせて任せる。本人の答えを聞いてから考えることで、リーダーの好みに偏りにくくなると思います。

細かく指示を出してほしい人もいれば、大きく見守ってほしい人もいる。その違いを、主体性がある、ないという評価にすぐ結びつける必要はありません。具体的な説明があれば、その先は自分で考えて進められる場合もあるはずです。

また、同じ人でも、慣れた仕事と初めての仕事では、欲しい支援が違うかもしれません。一度聞いた答えで、その人の任せ方を固定してしまうのも、少し違う気がします。

私のように、大きく任せてもらって成長した人間は、任せた方が相手のためになると思いやすいのだと思います。でも、相手が具体的な支援を求めている時まで任せきりにすれば、それは私の成功体験の押し付けになってしまいます。

本人の意向を聞くことは、すべてを希望どおりにすることではありません。仕事の条件や必要な確認も共有しながら、どのくらい任せ、どこを一緒に考えるかを相談する。そのやり取りまで含めて、任せ方なのだと思います。

良いリーダーは、口を出す量だけでは決まらない

信頼される上司が細かく口を出さないのは、相手に無関心だからではなく、自分で考えて動く余地を大切にしているからだと思います。その一方で、情報が足りなければ説明し、困っていれば関わり方を変える必要があります。

私には、細かく管理されて苦しかった経験も、任せてもらって成長した経験もあります。だからこそ任せることを大切にしたいのですが、自分が任せすぎた経験から、それだけでは足りないと分かりました。

相手が自分で動けるだけの情報と安心感を渡し、どこまで任せ、どこまで支えるかを、相手に合わせて考える。私が目指したいのは、そういうリーダーです。

信頼とは、思うだけではなく、任せるという行動にも表れると思います。ただ、その任せ方が相手に合っているかは、自分一人では決められません。

部下が動けていない時には、任せた仕事の説明だけでなく、どんな関わりを必要としているかも確かめたい。私自身、診断士実習でもらったフィードバックを、そこに立ち戻るきっかけとして持っておきたいと思っています。

エアポート人財育成の専門家。11年間の成田空港での経験と中小企業診断士の知識を元に、人と組織が明るく成果を生み出す研修や組織変革の支援を行っている。人間力と組織力を向上することで、新事業展開や魅力ある職場づくり、委託元のレビュー向上に繋げます。

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