部下が自分で考えないのはなぜ?指示待ちを生む職場の特徴と主体性の育て方

1.部下が自分で考えないのは、本当に本人の問題なのか?
投稿が少し空いてしまいました。変わらず元気にやっておりますが、プライベートもやる事が増えてきたので少し投稿も遅れ気味です。ここから巻き返していきます。
「部下が自分で考えてくれない」「指示したことはやるけれど、その先がない」。管理職として仕事を進めていると、そう感じることもあると思います。毎回指示を出すのは大変ですし、もう少し自分から動いてほしいという気持ちも、よく分かります。
ただ、部下が自分で考えないのは、考える力がないからとは限りません。自分で考えて動くことに大きなリスクを感じる環境では、指示を待つことが本人にとって合理的な選択になることがあります。
失敗したら責任を追及される。自分から提案した仕事では、困っても助けてもらえそうにない。そもそも、どこまで自分で判断していいのか分からない。そうした事情が重なれば、動く前に上司の指示を待つのも、理解できる行動です。
こんにちは。あきばやコンサルティングの秋葉慎太朗です。私は成田国際空港株式会社で11年間、IT・通信やセキュリティ、施設・設備、大規模プロジェクトなどに携わり、現在は中小企業診断士として組織開発や人財育成を支援しています。
前職では、言われたことはきちんとやるけれど、自分から新しいことには手を出さない人を多く見てきました。私自身も、その一人だった時期があります。
もちろん、本人の経験や能力、価値観、意欲による違いはあります。すべてを職場のせいにするつもりはありません。ただ、「主体性がない人だ」と結論づける前に、その人が動かない理由を、もう少し考えてみたいのです。
2.指示待ちは、自分を守るための合理的な行動になることがある
前職を振り返ると、自分から動くことをためらう背景には、「責任を追及されたくない」という気持ちがあったように思います。誰しも失敗して怒られたくないですよね。私もそうでした。
自分で考えて提案し、自分で動いて失敗すれば、自分の判断について説明を求められます。一方、「言われた通りにやりました」であれば、少なくとも自分の責任は薄くなる。実際の責任の所在とは別に、働く側の感覚としては、その違いがありました。
自分から提案して、自分から失敗したら誰も助けてくれない。そんな空気を感じていた時期もあります。実際に誰も助けてくれなかった、と言いたいわけではありません。当時の私には、そう感じられる雰囲気があったということです。会社全体や、そこで働く人すべてを表す話でもありません。
その中には、自分に割り当てられた仕事はきちんとやるのに、新しい仕事が降ってきそうになると全力で拒否する人もいました。周囲からすれば、もう少し協力してほしいと感じる場面です。でも、その人たちは仕事そのものをサボっていたわけではなく、自分の担当業務については真面目に取り組んでいました。
責任を持って働く気持ちはある。ただ、その責任が広がることは避けたい。そう考えると、担当業務への真面目さと、新しい仕事への消極性は、その人の中では矛盾していなかったのかもしれません。
私自身も同じ空気の中にいたので、外から「あの人たちは受け身だった」と批評するだけでは説明がつかない気がします。
自分を守るために、指示された範囲から出ないという選択には、納得できる部分がありますよね。
ただ、本人にとって合理的でも、職場としてその状態が続いてよいとは思いません。改善の提案が出ず、新しい仕事を引き受ける人が限られてしまう。その状態を変えたいなら、動かない人を責めるだけでなく、動いた人が何を引き受けることになるのかを見る必要があります。
3.「もっと主体的に動け」と言うだけでは、人は動かない
こうした状況で「もっと自分で考えて」「主体性を持って」と伝えても、本人から見えるリスクが変わらなければ、行動は変わりにくいと思います。
例えば、自分で判断した結果を後から細かく否定されるのに、何を基準に判断すればよかったのかは分からない。提案は歓迎されても、その後の調整や追加業務は提案者だけが抱える。こうしたことが起きる職場なら、次の提案をためらうのも無理はありません。これは前職の出来事を追加しているのではなく、指示待ちが生まれる条件として考えられる例です。
上司が振り返れるのは、普段の関わり方です。失敗の報告を受けたとき、事情を聞く前に責めていないか。本人に任せているつもりでも、実際には何一つ決められない状態になっていないか。相談してほしいと言いながら、相談すると「それくらい自分で考えて」と返していないか。
上司にも納期や成果への責任があり、いつでも余裕を持って対応できるわけではありません。それでも、部下は「任せる」という言葉だけでなく、困ったときにどう対応してもらえるかを見ていると思います。
もちろん、自分で考えるための知識や経験が足りない場合には、教えることが必要です。仕事の目的や判断材料が分からない人に、答えだけ求めても難しいでしょう。安全や品質に関わる業務では、手順を守り、確認すること自体が適切な判断でもあります。確認の多さだけで、部下の自主性が低いとは決められません。
何が分からずに止まっているのか。判断できるけれど、不安で止まっているのか。それとも、今の仕事に自分から関わる意味を見つけられていないのか。同じ「動かない」でも、必要な関わり方は違います。
4.私自身、仕事への見方が変わってから動き始めた
私が仕事の意義を強く考えるようになったのは、コロナ禍以降です。自分の人生や今後について考える時間が増え、目の前の仕事をどう捉えるかも、少しずつ変わっていきました。
その中で、どんな仕事にも、きちんと意味や意義がある。それを自分が認識していなかっただけではないか、と考えるようになりました。
仕事の目的を説明できることと、その仕事が自分にとってどんな意味を持つのかが分かることは、少し違います。会社に必要な業務だと理解していても、それだけでは、自分からもう一歩関わろうとは思えないこともあります。私にとっては、自分のこれからと仕事を結びつけて考えることが、向き合い方を変えるきっかけになりました。
「楽しい仕事をやるのか、仕事を愉しくするのか。この違いは大きい。」
楽しい仕事に出会えたら、それはうれしいことです。ただ、仕事の内容や配属先が変わるのを待つ間にも、自分が何を実現したいのか、どんな人生を送りたいのかを考えることはできます。そこから今の仕事を見ると、経験しておきたいことや、身につけたい力が見えてくる場合があります。
私が言う「仕事を愉しくする」は、そのように、自分の願いと仕事の接点を見つけていくことです。気の持ちようで何でも楽しもう、という話ではありません。負担が大きすぎる仕事や、改善すべき働き方まで、本人の前向きさで引き受ける必要はないと思っています。
また、人生の目標が立派に言語化できていなければいけないわけでもありません。もう少し得意なことを増やしたい、誰かの役に立てる実感がほしい、今より余裕を持って働きたい。そうした願いにも、仕事との接点はあるはずです。
私自身も、この考えに最初からはっきり到達していたわけではありません。うっすらとそう思い始めた頃には、すでに退職することも考えていました。
5.退職を決めてから、むしろ仕事に主体的になった
少し不思議に聞こえるかもしれませんが、私は会社を辞めると決めてから、むしろ仕事に主体的になりました。
「退職後の自分のために、今いる環境で経験できることは全部経験しておこう」。そんなふうに考えるようになったからです。その一つが、課内の紙書類を電子承認へ移行するDXプロジェクトでした。私は、その仕事に自ら手を挙げました。(たしか・・・そんな流れだったと思います笑
以前の自分なら、余計な仕事が増えると考えていたかもしれません。新しいことを始める以上、今まで通りに仕事をするだけでは済まなくなります。それでも、この頃の私には、退職後の自分に必要な経験だと捉えられました。
同じ職場にいても、自分のこれからにつながる仕事だと思うと、関わり方が変わる。私にとっては、それを実感した経験です。会社への忠誠心が高まったから手を挙げた、という順番ではありません。辞めることを決めていたのに、その会社で経験できる仕事へ、自分から関わるようになったのです。
だから私は、主体性と会社への忠誠心は同じではないと考えています。会社を大切に思う気持ちが行動を支えることもあるでしょう。ただ、自分の将来のために学びたい、経験を積みたいという思いも、目の前の仕事への積極性につながります。
これは、退職を考えれば主体性が上がるという話ではありません。私の場合は、退職後を考えることを通じて、今の仕事が自分の人生とつながりました。変化のきっかけは人によって違うと思います。
自己決定理論でも、行動そのものが面白いから取り組む場合に加えて、その価値を自分で認め、納得して取り組む動機づけが論じられています。仕事自体をいつも楽しいと感じなくても、自分にとっての意味を持てることはある。この考え方は、私の経験にも重なる部分があります。
6.主体性のある人に感じる3つの共通点
自分の経験や、主体的に働いている人たちを見てきた中で、私が感じている共通点は三つあります。全員に当てはまる条件というより、仕事への向き合い方を考える手がかりです。
一つ目は、職場に自分の存在意義を感じていることです。自分が必要とされている、誰かの役に立っている、自分だからできることがある。そうした実感があると、その仕事に関わる理由が自分の中に生まれます。
これは、褒めてもらえるかどうかだけの話ではありません。自分の担当業務が誰を助け、何を支えているのかが分かっていることです。目立つ成果が出る仕事ばかりではないからこそ、日々の仕事が果たしている役割を共有する意味があると思います。
二つ目は、裁量権が与えられていることです。自分で考えても、すべての判断を上司に戻さなければ進められないのであれば、考える余地は狭くなります。目的や目標、決めてよい範囲、相談が必要な場面が分かっていると、自分で判断しやすくなります。
完全に自由にすればよいわけではありません。経験の浅い人には支援が必要ですし、仕事によって任せられる範囲も違います。それでも、自分の判断を仕事に反映できる部分があることは、大切だと感じます。
そして三つ目が、自分の人生でやりたいことと、仕事がつながっていることです。私は、ここが特に気になっています。
会社に依存していない人ほど、主体的に見えることがあります。とても保守的な雰囲気の会社で、新事業開発を担当しながら前向きに挑戦している人を見ると、私自身も見習いたいと感じます。ただ、その人の内面まですべて分かるわけではありません。自分なりの軸が、行動を支えているように見えるのです。
ここでいう「依存していない」は、会社への愛着が薄いとか、転職できる人の方が優れているという意味ではありません。会社の評価だけに、自分が働く理由のすべてを預けていない、という感覚に近いです。
身につけたい能力がある。将来やってみたいことがある。誰かに届けたい価値がある。そのために、今の仕事で何ができるかを考えている。長く同じ会社で働きながら、そうした軸を持つこともできます。
主体性とは、会社のために何でも自分からやることではなく、自分自身の意思で仕事との関わり方を選び、行動していくことだと私は考えています。周囲との約束や責任を果たしながら、その仕事に自分はどう関わりたいのかを持てること。そこには、本人の人生を考える余地があってよいはずです。
7.部下の主体性を育てたいなら、まず「やりたいこと」を聞く
「部下が自分で考えてくれない」と相談されたら、私が最初に聞いてみたいのは、「部下を本当に信頼して、やりたいことを引き出していますか?」ということです。
少し厳しく聞こえるかもしれませんが、上司が期待する姿について話す時間はあっても、本人がどうなりたいのかを聞く時間は、意外と取れていないのではないかと思うのです。
何をやってみたいのか?どんな力を身につけたいのか?
今の仕事の中で、もう少し関わってみたい部分はあるのか?
最初から将来の夢を聞く必要はなく、本人が答えやすいところからでよいと思います。
「特にありません」という返事でも、やる気がないと判断するのは早いでしょう。まだ考えがまとまっていないのかもしれませんし、上司にどこまで話してよいか迷っている可能性もあります。人生や私生活の話を、無理に引き出す必要もありません。
本人の希望が少し見えてきたら、今の仕事との接点を一緒に探します。例えば、人に説明する力をつけたい人なら、業務の説明資料をつくる仕事に関心を持つかもしれません。繰り返し作業を減らしたい人なら、小さな改善を試すことに意味を感じられるかもしれません。あくまで例ですが、同じ仕事でも、取り組む理由は人によって違います。
そこで気をつけたいのは、聞いた希望を使って、仕事を増やすだけにしないことです。成長につながると言われても、既存の仕事が何も減らず、支援もなければ、本人は苦しくなります。業務量を調整し、考えて決められる範囲を渡し、困ったときには支える。信頼は、そうした対応にも表れると思います。
希望がすぐに実現できない場合もあります。そのときは、難しい理由や、今できる範囲を率直に伝える。本人の希望を聞くことと、希望をすべて通すことは別ですが、聞いたことを一緒に検討する姿勢は持てます。
目的や判断範囲をどう共有するかなど、具体的な任せ方については、関連記事「信頼される上司は、なぜ細かく口を出さないのか?部下が自分で動ける任せ方」で詳しく扱います。ここではまず、上司の期待と同じくらい、本人の意思にも耳を傾けたいと思います。
8.安心感から、挑戦と成長が生まれる職場へ
本人がやってみたいことを見つけても、提案すれば頭ごなしに否定される、失敗すれば人格まで否定されるという不安があれば、動きづらいままです。そこで関わってくるのが、心理的安全性です。
心理的安全性は、質問や相談、失敗の報告など、人間関係上のリスクを伴う行動を安心して取れるという、チーム内で共有された認識を指します。エドモンドソンによる51の職場チームを対象とした研究では、心理的安全性と学習行動との関連が示されています。
職場で考えるなら、分からないことを相談できる、必要なときに助けを求められる、挑戦がうまくいかなかったときに次を一緒に考えられることです。何を言っても許される、成果や責任を問わない、という意味ではありません。仕事の基準は共有しながら、問題を隠さず話せる状態をつくることだと思います。
そして、安心感があるだけで、必ず主体性が育つわけでもありません。私がつくりたいのは、「安心感 → 挑戦 → 成長感」という流れです。
安心感があるから挑戦できる。挑戦するから、できたことや難しかったことが分かる。それを振り返り、以前より判断できることが増えたと感じられれば、次に動く理由にもなるでしょう。挑戦は大きなプロジェクトに限りません。小さな提案や、担当業務の一部分を自分で決める経験から始まることもあると思います。
「部下が自分で考えない」と感じたときには、この職場では、自分から動くことが報われる状態になっているかも振り返ってみてほしいのです。提案したら負担だけが増えていないか。本人が望む経験や成長にもつながっているか。その視点があると、上司として変えられる部分が見えてきます。
仕事を愉しくするというのは、自分の願いや人生で実現したいことを、目の前の仕事とつなげていくことだと思っています。私自身、受け身だった時期を経て、そのつながりが見えてから、仕事への関わり方が変わりました。
部下が今、何を実現したいと思っているのか。一度、答えを急がずに聞いてみる。まだ言葉になっていない思いを一緒に考えるところから、関係が変わることもあるのではないでしょうか。










